17話 極!LEDバースト



「もう少しで…頂上、レガリア・コアの間だな」

通路を走る一同。通信機からエリヤの声が聞こえる。

『シラヌイ、少し休みますか?』

「なぜ?」

『ムラサメと戦ったんです。随分体力を消耗したはず、貴方が思うより体は限界に近づいている。いくら貴方が丈夫といえど』

「はは。何だ、過保護だぞエリヤ?」

『茶化さないでください!私は本気ですよ!』

通信機から大声が響く。シラヌイはころころと笑った。すると、今まで静かだったアルバが口を開いた。

「なあ、なんでお前はそこまで無茶をする?」

ルチアとシラヌイは振り返る。アルバは続けた。

「お前たちはさ、ほんっと綺麗事が好きだよな。使命だなんだ信念がどうのって自分を縛って、そういうの窮屈じゃねえ?」

「何を言っている…?」

「はあ〜わっかんねえのか?肩がこるほどお人よしだな!!俺はこういってんの!もう、仲良しごっこは疲れたってな」

そうアルバが言った瞬間。

血飛沫が舞った。

「え?」

ルチアの目前にはシラヌイの背。

シラヌイはルチアを庇うようにしてその”斬撃”を受けていた。

「———」

表情を歪ませてシラヌイは膝を折る。咄嗟にルチアはその体を支えた。

理解が追い付かない。

ルチアは視線を上げる。そこにはグロウルの腕を掴み後ろ手に拘束したアルバがいた。

状況の読めないルチアは呆然とする。そこにアルバの蹴りが放たれた。

「ルチア、よけ、ろ!」

シラヌイの掠れる声が耳に入る。咄嗟にルチアはシラヌイを抱えて後ろ飛びに回避した。アルバの蹴りは空を切った。

両者の間に空間が生まれる。

アルバは普段と変わらない。平静とした様子で二人を見つめていた。

「…回収完了っと」

「どういう、つもり、だ」

二人の視線がアルバを刺す。

アルバは顔をしかめてため息をついた。

「何でわっかんねえかなあ…?どいつもこいつも!ラルゴもシャルルも負けて、イッセンもどっか消えちまった。馬鹿だよな、選ばれておいて最後には負けるほうを選ぶなんて。ブレインについてりゃ、命は助かるってのに」

シラヌイは冷たい瞳でアルバを見据えた。

「そう、か…。まさかムラサメの言っていたことが本当だったとは。信じたくは、なかったぞ」

ぴくり、アルバの眉間にしわが寄る。すると、アルバは顔を抑えて噴き出した。

「何がおかしい」

シラヌイの鋭い視線にアルバは笑いを堪えつつ答えた。

「ああそう!!最初から疑ってたってか!っは、やっぱ仲間とか信用ならねえなあ!まあ俺も人の事言えねえか!はは!」

「裏切って、いたの、ですか……?」

「はなから仲間だとは思ってねえよ」

アルバは突然笑い止む。その表所は冷たく冷え切っていた。ルチアの背筋が凍り付く。

「どうして」

ルチアの唇が震えた。歩み寄ろうとするもシラヌイに制される。見ればシラヌイの胸には赤い線。その切り傷からは血が溢れていた。シラヌイを置いてはいけない、ルチアは動けなかった。

「どうして!!アルバ!!」

アルバは表情一つ変えず動じない。

空気が凍り付く、その静寂はグロウルの声に引き裂かれた。

「あれ?……え!いやあ!放してよ!!!!!!」

「十分現実逃避はしたろグロウル。最後の仕上げだ、諦めな」

ざあ、とグロウルの顔色が青ざめる。アルバは二人を見つめたままグロウルを抱えた。

「ルチア、ルチア!たすけて!」

ルチアは呆然と絶句していた。信じられないものを見るように。

「助けて!助けてよ!」

グロウルの悲痛な叫び声が響く。が、ルチアは動かない。いや動けなかった。

じり、アルバは一歩後ずさる。そして歯を見せて笑った。

「まあ、そういうこと!俺は賢く動いた。俺は死にたくなんてねえからさ!

それだけ!…おつかれさん!」

アルバがその場を去ろうとしたその時。両者の間の通路、その向こうから声が聞こえた。

「まちなさい」

アルバははっと顔を強張らせる。

それは聞きなれた声。

目を泳がせながら、アルバはその方向を見た。

「なんで、来ちまうんだよ…お前は…」

「な…」

「何でだよ…なあ——————エリヤ!!」

一同は目を見開く。

そこにはエリヤが立って居た。

エリヤは静かに口を開く。見慣れた微笑がにっこりとその顔に浮かんだ。

「私たちは一蓮托生と言ったでしょう?はは、来ちゃいました!」

「——————ッくそ!!」

アルバは表情を歪ませると、壁に取り付けてあった警報機をガラス蓋ごと叩いた。

瞬く間に通路全体にサイレンが響く。向こうから足音が聞こえた。

「!」

「じゃあな。次会うときは正真正銘、お前たちの敵だ」

アルバはそう吐き捨てると、暴れるグロウルを抱え一同に背を向ける。

「アルバ!」

エリヤが呼び止める。が、アルバは振り返らない。

数を増し、次第に大きくなってくる足音。

アルバはそのまま姿を消した。


呆然と、ルチアは座り込んでいた。

浅い息を繰り返すシラヌイを抱え、アルバとグロウルの消えた方を見つめて。

「ルチア、しっかりして。今はここを逃げましょう」

「——」

「ルチア!」

はっと顔を上げる。

ルチアは慌てて目元をぬぐうとエリヤと共にシラヌイを抱えその場を後にした。








アルバの横をヴァンガード兵がすり抜けて行く。

グロウルは焦点の合わない瞳で小さく呟いた。

「はなして」

「ああ、悪かったよ」

「…よく、やるよ。みーんな嘘。どれも、あれも、これも!そんなに嘘ばっかついて苦しくないの?」

「うるせえな。なんともねえよ。死ななきゃみんなかすり傷だ」

はあとため息をつき、平然と答えるアルバ。その胸につ…と指を這わせ、グロウルは目を細めて笑った。

「あは。カッコ悪いね。アルバ」

「あ?」

アルバの眉間にしわが寄る。グロウルはぱっと両手を上げてアルバから離れた。

「でも、はみ出し者の気持ちはよくわかるから。あは…お揃い!」

アルバは答えない。グロウルはアルバの前でくるりとターンして見せた。

「結局こうなっちゃうんだね」

「俺たちは共犯者。こうするしか道はない。気は済んだか」

「うん。…そうだね。少しの間だったけど、わがまま聞いてくれてありがと」

その言葉にグロウルは瞼を伏せる。焦点の合わない瞳は暗くよどんでいた。

「やっぱり。みんな同じだった」

(ルチア。君は僕を見てくれなかったね)

グロウルは両手で顔を覆う。指の隙間からすすり泣く声が聞こえた。

しゃくりあげる声。しかしそれは次第にその色を変える。彼女はいつの間にか小さく笑っていた。


「ふふ。うそつき」













「これくらいの手当てしかできませんが少しはマシでしょう。すみませんね、私はいつも遅いようで」

「いいや、助かるぞエリヤ」

物陰に隠れる一同。そのすぐ表の通路でヴァンガード兵が駆け抜けていった。

エリヤはシラヌイに適当な処置を済ませると小さくよし、と言ってほほ笑んだ。

「良くここまで来ましたね。あと、少しです」

「ああ」

シラヌイはエリヤに笑い返した。それを見て、ルチアはぐっと息をのむ。

「ルチア、感情に飲み込まれるな。落ち着け」

「落ち着いてなんていられません!どうして、どうして…!一緒に、がんばろって、約束、した…っのに」

ルチアの声が震える。その瞳からは涙が溢れた。

「わかりません。アルバが何を思っているのか。私、どうしたらよかったのか」

「ルチア…」

しゃくりあげるルチアの涙をぬぐう。シラヌイはその肩を掴んで頬を撫でた。

「ルチア、今は考えても仕方ない。アルバが何を考えていようと事実は変わらん。俺たちは進むしかないんだ」

「…わからない。どうして。どこまでが本当でどこまでが嘘か、わからない。仲間だって、思ってたのに、全部、うそだったの…?」

「……それは」

シラヌイの言葉が詰まる。その瞳が泳ぐ。

(なんだ、これは)

シラヌイは動揺していた。胸の奥が裂けるような感覚、息が詰まりそうだと思った。

自分の知らない感覚に頭が痛くなる。

言葉が、失われた。

「ルチア、シラヌイ。おいで」

「…!」

穏やかな声色。

二人は優しく抱きしめられた。

エリヤは明るく笑いながら口を開いた。

「気持ちはわかります。私も驚いてる。貴方達は”裏切られた”と感じているでしょう。でもそれは信じていたからです。ならばそのまま、貴方の信じたアルバを信じてやってくれますか?」

「え?」

ルチアが顔を上げる。エリヤは澄んだ瞳をしていた。

「貴方達が見てきた彼は本当に嘘だけでしたか?」

はっとルチアは我に返る。

「それは…」

少しの逡巡。その後に、ルチアはゆっくりと首を横に振った。

「動揺するのも仕方ありません。ですから後で好きなだけ文句を言ってやりなさい!今は、その程度に考えていればいい」

「エリヤ…」

「ふ。…確かにそうだな。直接、話をすればいい」

二人の表情が少し綻ぶ。落ち着いた様子にエリヤはうんうんと頷いた。

「その通り!ええ、ですから先へ進みましょう。グロウルの事も心配です」


息が詰まる。その表情が悔しさに歪んだ。

「あの状況ではどうする事も出来なかった。お前のせいじゃない」

シラヌイの言葉にルチアははっと顔を上げた。

揺れる瞳。息をのむルチアにシラヌイは口を開く。

「戦えるな?ルチア」

強い眼差し。その視線にルチアはぐっと強く瞼を閉じる。そうして深く深呼吸をして荒れた息を整えた。

(行くしか、ないんだ)

ルチアは固唾を飲むと、赤くはれた目で前を向いた。

シラヌイと視線が交わる。

ルチアは頷いて言った。

「はい」











一同は身をひそめながらある部屋に忍び込んだ。

「ここは…」

エリヤはその部屋を見渡す。そこは資料室のようだった。

床に散らばった紙束。卓上にはモニターがあり、そこには映像が開かれていた。

「これは研究記録だ!再生します!」

エリヤはそう言うと、映像を再生させる。シラヌイとルチアはモニターをのぞき込んだ。




映像の中はある一室を映し出していた。そこに現れたのはローズブレインだった。


day2 4:39

この実験が成功すれば完成する。

開発段階であったIFエネルギーで錬成する人造人間<ヒューマノイド>実験。その実現は間際である。

自分でも何故こんなものを作っているのか予測できないがこの衝動は抗いがたい。これはきっと必要なものなのだろう。


day3 22:50

成功だ!!完成した!!

私の人造人間<ヒューマノイド>!ああ、私の子!完璧とはほど遠い、感情の制御が機能していないが構わない。不完全で欠落品!それでもかまわない!そうだ、お前に名前をつけよう。いびつな私の子、お前は今日から<グロウル>と名乗るがいい。


day27 23:48

あれからグロウルを研究していくうち興味深い事が分かった。あれはまさしく兵器であった。

グロウルはIFエネルギーを使用して錬成した人工の肉体に、人工知能を導入した人造人間<ヒューマノイド>である。そんな体の性質故か、これは微弱にもインフィニティフォースを操れる事が判明した!これが発生させる音波には微弱ながら∞の力を帯びていたのだ!これを応用すれば様々なものに利用できる!

これは私の剪定計画の鍵だったのだ!

これにレガリア・コアを操作させ、インフィニティ―フォースの流れを私に送らせる!グロウルを触媒にし、私は<全能の力>を手に入れる事ができるのだ!!

あの衝動はこのためだったのか、そうにちがいない。

ああ愛しい我が子、お前を造って正解だった。

これが覚醒するその時こそ、"私という装置"は完全なものとなるのだ。




映像が終わる。

それと同時に、ルチアはガタリと音を立てて音ずさった。

「そんな、まさかグロウルが…インフィニティフォースと繋がる”道具”…!?冗談じゃない。そんなこと、させるものですか!」

「成程、彼女を人柱に∞の力を得る。そういう事ですか」

「これは益々悠長にしてられないな」

三人は顔を合わせると頷いた。

「ええ、急ぎましょう!」

そう言い、ルチアが部屋を出ようとした、その時。

ドカン!

資料室の扉は弾けるように吹き飛んだ。

「!?」

一同は土埃にせき込んだ。

するとコツ、と足音が一つ。

(この、気配、は)

はっとエリヤが目を開く。

「みんな!伏せてください!」

エリヤが咄嗟に叫ぶ、が時すでに遅く。間に合わないと思ったエリヤは瞬間的に二人の前に立ちはだかる。

——つもりがその目の前にはシラヌイが既に回り込んでいた。

ガキィン!

「ッ!!」

目の前で飛び散る火花。黒い刀と白い刀が唾ぜりあった。

「ほう。これを防ぐか」

白い刀でシラヌイを圧し込む男——ネクロはそう言うとその細腕からは想像もつかない力でシラヌイを蹴り飛ばした。

「が、ぁ!」

解き飛ばされ、シラヌイは壁に叩きつけられる。息が肺から吐き出された。

「はは…、また貴方と会うことになるとはね」

エリヤは冷汗を流しながらネクロに語り掛けた。

ネクロは一瞥もくれず、シラヌイの下へ一歩、一歩と近づいてゆく。

「っ待ちなさい!」

エリヤは懐から拳銃を出すと、その銃口をネクロに向けた。が、それは音もなく目の前で真っ二つになった。

「——————」

ネクロは未だシラヌイを見つめたまま。

エリヤは唇を噛むとネクロに向かって走り出した。

「来るな!」

シラヌイが叫ぶ。エリヤはその声に足を止める。気が付けば、ネクロの白い刀身はエリヤの首筋に触れていた。

「は、はは…」

(手も足も、でないっていうのか)

エリヤは表情を歪めて笑った。


ルチアは、その場に立ち尽くしたままその光景を見ていた。

(どうして、会話なんて、できるの)

指先の一本すら、ルチアは動かせなかった。全身を這うように、蛇に睨まれた蛙が如く体を動かせない。思考すら憚られた。

(抗おうとする、意思も、起きない)

ルチアの脳裏に見えるのは最悪の未来。

死。

シラヌイは動けない。

エリヤもまた動けない。

ルチアは時間が止まったかのような、永遠とも言える一瞬に絶望した。

目の前の無機質な男はシラヌイに迫る。

静かに口を開いた。

「宣告する。お前たちはここで死ぬ」

「いいえ、させませんとも!大人の意地をなめないでいただきたい!」

エリヤが叫ぶ。

そうして懐に手を伸ばす、がそれよりも早く白い刀身が動いた。

(こんな、所で―————―—)



エリヤは迫りくる死に息をのむ。

その刹那。





ボコォォォン!!

耳をつんざく爆発。

突然巻き起こった爆発にネクロの体は吹き飛んだ。爆風にあおられ、エリヤは後ずさる。顔を覆い、驚愕に目を見開きながらも視線は爆発源を辿る。

声が聞こえた。

「一撃で殺せばよいものを…。戦士としては好いが殺しにかけては愚策じゃったな」

聞きなれた声。

爆破された出入り口にはクジョーが立っていた。


「なはは!待たせたの!皆のクジョー博士、ビッグに参上じゃあ!!」


「クジョー!!無事で」

思わずほっと顔を綻ばせるエリヤ。しかし、エリヤの表情はすぐさま硬直した。

そこにあるはずのものがない。

歯を見せて笑うクジョー。

その姿は血まみれで

<有るはずの右肩から向こう>が存在していなかった。

エリヤは目を疑った。

「クジョー…?その怪我。腕が」

「死に底なったか、科学者」

声の方に視線が集まる。クジョーはあっけらかんと笑っている。

視線の先、そこには爆発により吹き飛ばされたはずのネクロが、土煙の中立ち上がるのが見えた。

(なに…あれ…)

首が折れていた。その背はどろりと溶けていた。が、それらはすぐさま醜い音をたてて再生していった。

内臓が

骨が

皮膚が

ぐちゃりと、何事もなかったかのように元通りになる。

ルチアはネクロのおぞましい姿に戦慄した。

「なははは!まあ肌でビシビシ感じるじゃろうがこいつはヤバい!まともに戦って勝ち目はない!そいつはな、不死身じゃ」

「何…?」

シラヌイは息をのむ。冷汗が頬を伝った。

クジョーは続けて言った。

「まあそれもそのはず、代謝を強制的に高めるナノマシンが体のいたるところに埋め込まれておるみたいじゃからの」

その言葉に黙っていたネクロは口を開いた。

「感嘆。あの一瞬でそこまで知るとはな」

と、そう言ったネクロの動きが止まる。エリヤは驚愕した。

「動きが、止まった…?」

「”止めたのじゃ”」

クジョーは目を細め、不敵に笑った。

「天才博士をなめるなよ。マシンであれば私に扱えぬものはない!」

彼女の手には武骨な四角い機械があった。

「体内ナノマシンを妨害するX波、それを今!つくった!少しの間スタンしてもらうぞネクロ!!」

「無駄なことを」

「きけ!お前たち!この男はやばい。今話した通り、いくらぶっ飛ばしてもナノマシンが肉体を超再生する!!その頭を落とさん限り死なん!!ていうか頭落としても死なんかもしれん!!つまり勝てん!!」

「なら、どうすればいい!」

シラヌイは叫ぶ。エリヤは静かに顔色を青ざめさせていた。

「はっ。ま、さか」

クジョーはネクロを見つめたまま薄く微笑んだ。

「ああ、それしかあるまいの」

「…いいえ、駄目です。許しません、そんなことは。クジョー!下がりなさい!」

「あーあー、聞く耳もたんの!!ふっふーんそおら最大火力じゃ。ポチっとな」

四角い機械のスイッチを押す。すると、その機械から何かを刻むような電子音が聞こえてきた。

我に返ったルチアは、がっと顔を上げてクジョーを見る。シラヌイは立ち上がって叫んだ。

「—————ッ自爆するつもりか!!!」

ヒュ、とルチアは息を吸った。未だクジョーは不敵に笑っていた。

「超再生するならばその身、一度に木っ端みじんにしてやればいいだけの事よッッ!!!!!」

「…愚かな」

「クジョー!」

エリヤが叫ぶ。その声には怒りが混じっていた。だが、それをかき消すようにクジョーは声を上げる。

「きけエリヤ!私らは随分と皆を振り回した。この都市に傷跡を残しすぎた!責任を取らねばならん。このままでは死んでも死にきれんのじゃ」

「…ッ」

「許せよ。そしてこの都市を救ってやってくれ。未来は主らに託された!!」

未だ見たことのない真剣な表情。クジョーは懇願するようにエリヤを見た。

「また、私は見送るんですね」

「…悪いの」

二人はそう小さく言葉を交わす。エリヤは一度瞼を閉じた。

「いきますよシラヌイ、ルチア」

「——って!待ってくださいエリヤ!こんな、ことがあっていいんですか!まだ助かる見込みは」

「このままネクロにつかまって全滅するつもりですかッ!」

ルチアの声に被さるように、エリヤは叫ぶ。ルチアは言葉を失った。

「行くぞルチア」

シラヌイはゆらりと立ち上がるとルチアの腕を引いた。


「無駄。足止めにしかならん」

ネクロはそう呟く。ミシリと、その体を軋ませてネクロは刀を構えた。

「なははははは!!大口を叩けるのもそこまでよ!ネクロ!冥土の土産じゃ——————至高の科学者ともども過去の亡霊は散るがよい!!!」




クジョーの耳に誰かの叫び声が聞こえた気がした。

朦朧とした意識の中、目前に迫る白い刀身。

クジョーは最後の力を振り絞るようにカッと目を開く。

そうして口の端を釣り上げ、不敵に笑った。



「極!ファイナルL(light)E(extreme)D(digger)バ——————————ストッッッ!!!!!」



音も吹き飛ばす爆炎。

やがて視界は真っ白な閃光に染まっていった。






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